UE5でゲームを作っていると、最初はブループリントがとても便利に感じます。
ノードをつなげればすぐ動く。
少し処理を足せば、すぐに機能が増える。
C++を書かなくても、かなり複雑なことができます。
でも、作り続けているうちに、だんだんこうなっていきます。
「どこを触ればいいかわからない」
「修正したら別のところが壊れた」
「前に自分で作ったのに、もう意味がわからない」
「このブループリント、結局なにをしているんだっけ?」
ブループリントが壊れていく原因は、ノードが多いからでも、技術力が足りないからでも、ブループリントだからでもありません。
一番の原因は、そのブループリントの役割がわからなくなることです。
この記事では、ブループリントをきれいに描くテクニックではなく、壊れにくく作り続けるための「判断基準」について整理します。
ブループリントが壊れる本当の理由

ブループリントが壊れる原因として、よくこう言われます。
- ノードが多いから
- 技術力が低いから
- ブループリントだから
- 設計ができていないから
もちろん、これらが原因になることもあります。
ただ、もっと根本的な問題があります。
それは、そのブループリントが何をしているのかわからない状態になることです。
例えば、1つの BP_Character の中に、次のような処理が全部入っているとします。
- キャラクターの基本アクション
- イベント処理
- ロックオン
- 視野角の管理
- 入力処理
- 攻撃処理
- ダメージ処理
最初はこれでも動きます。
でも、機能を追加するたびに、BP_Character の責任が増えていきます。
その結果、後から見たときに、
「このBPは何をする存在なのか?」
が一言で説明できなくなります。
この状態になると、ブループリントは一気に触りにくくなります。
中を開かないと役割がわからない。
説明しようとすると長くなる。
どこに何があるかわからない。
修正したときの影響範囲が読めない。
こうなると、そのブループリントは「作業を助けるもの」ではなく、「迷わせるもの」になります。
そして、触るのが怖くなり、修正のたびに壊れていきます。
まず目指すべき状態は「説明できること」

ブループリント整理のゴールは、最初から完璧な設計をすることではありません。
まず目指すべきなのは、それぞれのブループリントが何をする存在なのか説明できる状態にすることです。
例えば、すべてを BP_Character に詰め込むのではなく、次のように分けます。
BP_BaseCharacter:キャラクターの基本動作BP_Player:操作キャラ固有の処理BP_Perception:キャラクターの視野や認識処理
こう分けると、それぞれの役割が説明しやすくなります。
BP_BaseCharacter は、キャラクターとして共通する基本動作を持つ。BP_Player は、プレイヤー操作に関する処理を持つ。BP_Perception は、視野や認識に関する処理を持つ。
この状態になると、修正するときに迷いにくくなります。
「移動やダメージ処理なら BP_BaseCharacter」
「入力の話なら BP_Player」
「視野や索敵の話なら BP_Perception」
というように、処理の置き場所を判断しやすくなります。
基準は「1BP → 1役割」

ブループリントを分けるときに、一番大事なのはノード数ではありません。
ノードが多いか少ないかだけで判断すると、分け方に迷います。
大事なのは、1つのブループリントに1つの役割だけを持たせることです。
つまり、
このブループリントは何をするものか?
に一言で答えられるかどうかです。
一言で説明できるなら、役割は比較的整理されています。
逆に、一言で説明できないなら、そのブループリントは役割を持ちすぎている可能性が高いです。
例えば、
「キャラクターの基本動作を管理する」
「プレイヤーの入力を受け取る」
「キャラクターの視野を管理する」
このくらいなら、一言で説明できます。
でも、
「キャラクターの移動もして、入力も受け取って、ロックオンもして、視野判定もして、イベントも処理して、攻撃も管理する」
となると、もう役割が多すぎます。
ブループリントが壊れるのは、こういう状態です。
分け方のコツは「誰に頼むか」で考える

ブループリントを分けようとすると、つい「処理単位」で考えたくなります。
でも、処理単位で考えると迷いやすいです。
「このノードはどこに置くべきか」
「この関数はどのBPに入れるべきか」
「これは分けるべきか、まとめるべきか」
こう考えると、どんどん判断が難しくなります。
そこでおすすめなのが、誰に頼むかで考えることです。
例えば、次のように考えます。
キャラクターの基本動作なら、キャラクター本体に頼む。
プレイヤーの入力なら、プレイヤー用のBPに頼む。
視野や認識なら、視野を管理するBPに頼む。
つまり、1つのブループリントを「1人の担当者」として見る感覚です。
この処理は、誰の仕事なのか。
誰に頼むのが自然なのか。
誰が責任を持つべきなのか。
こう考えると、処理の置き場所がかなり明確になります。
ブループリント分割は、単なるファイル整理ではありません。
仕事の担当を分けることです。
親クラスにまとめる基準

次に、親クラスを作る基準です。
ここでよくあるのが、
「似ているからまとめる」
という考え方です。
もちろん、似ていることも判断材料にはなります。
ただし、本当に見るべきなのは、同じ責任を持っているかどうかです。
例えば、プレイヤーも敵も、キャラクターである以上、共通する処理があります。
- 移動する
- 攻撃する
- ダメージを受ける
- イベントを処理する
- 吹き飛ぶ
- 死亡する
こういった処理は、プレイヤーにも敵にも共通する「キャラクターとしての責任」です。
この場合は、BP_BaseCharacter のような親クラスにまとめると自然です。
一方で、プレイヤーと敵で責任が違う部分もあります。
プレイヤーは、入力を受け取ります。
敵は、AIによって判断します。
これは同じキャラクターでも、責任が違います。
なので、
- 共通する責任は親クラスへ
- 個別の責任は子クラスへ
という分け方をします。
似ているからまとめるのではなく、同じ責任を持っているからまとめる。
ここが重要です。
コンポーネントにする基準

次に、コンポーネントです。
コンポーネントにするかどうかの判断基準は、とてもシンプルです。
これがなくても、このActorは成立するか?
成立するなら、コンポーネント候補です。
例えば、キャラクターに「視野」の機能があるとします。
プレイヤーや敵には必要かもしれません。
でも、NPCには不要かもしれません。
この場合、視野機能はキャラクター本体の必須機能ではありません。
使うキャラクターもいる。
使わないキャラクターもいる。
必要なときだけ付けられればいい。
こういう機能は、コンポーネントに向いています。
例えば、
- 視野判定
- ロックオン
- 特定の計算ロジック
- センサー処理
- 補助的な状態管理
こういったものは、Actor本体に直接持たせるより、コンポーネントとして切り出した方が扱いやすいことがあります。
ポイントは、それが本体の役割なのか、追加機能なのかです。
なくても成立するなら、コンポーネントとして外に出す。
ないと成立しないなら、本体や親クラスの責任として持たせる。
この判断だけでも、ブループリントはかなり整理しやすくなります。
この考え方は「単一責任の原則」

ここまで話してきた内容は、設計の世界では 単一責任の原則 と呼ばれます。
英語では、Single Responsibility Principle。
SOLID原則の「S」にあたる考え方です。
ただ、名前を覚える必要はありません。
大事なのは、理論名ではなく、戻れる基準を持つことです。
このブループリントは、何の役割だっけ?
ここに戻れるかどうかが重要です。
設計理論を全部覚えようとすると、かえって難しくなります。
オープン・クローズドの原則。
リスコフの置換原則。
インターフェース分離の原則。
依存性逆転の原則。
もちろん、これらも大事です。
でも、UE5でゲームを作り始めた段階で、いきなり全部を完璧に守ろうとすると、かなり難しいです。
まずは、単一責任だけでいいです。
1つのブループリントに、1つの役割。
一言で説明できる状態にする。
役割がずれたら、切り直す。
これだけでも、壊れにくさはかなり変わります。
なぜ単一責任だけでも現場が回るのか
理想を言えば、設計ルールは全部守った方がいいです。
でも、現実にはなかなか守れません。

時間がない。
途中で仕様が変わる。
とりあえず動かしたくなる。
後で直そうと思って、そのままになる。
自分でも過去の判断を忘れる。
ゲーム開発では、こういうことが普通に起きます。
だから、最初から完璧な設計を目指すより、崩れたときに戻せる基準を持っておく方が重要です。

単一責任の原則が強いのは、ここです。
役割からズレたときに気づきやすい。
切り直す起点になる。
誰でも再適用できる。
壊れやすくても、戻しやすい。
これが大きいです。
ブループリントは、どうしても壊れます。
機能を足せば複雑になります。
試行錯誤すれば一時的に汚くなります。
締切やテンションで雑に作ることもあります。
でも、戻れる基準があれば、立て直せます。
「このBP、役割が増えすぎているな」
「これは親クラスの責任だな」
「これはコンポーネントに出せるな」
「この処理はプレイヤー固有だな」
こうやって整理し直せることが重要です。
ブループリントを書く前に確認すること
ブループリントを書くときは、いきなりノードを増やす前に、まず自分に聞いてみてください。
このブループリントは、一言で説明できるか?
説明できるなら、そのまま進めてもいいです。
説明できないなら、役割が多すぎるかもしれません。
その場合は、次のように考えます。
これはキャラクター本体の仕事なのか。
プレイヤー固有の仕事なのか。
敵固有の仕事なのか。
親クラスにまとめるべき共通責任なのか。
コンポーネントとして外に出せる追加機能なのか。
この判断を挟むだけで、ブループリントはかなり壊れにくくなります。
まとめ
ブループリントが壊れる理由は、ノードが多いからでも、技術力が足りないからでもありません。
一番大きいのは、役割がわからなくなることです。
だから、まず意識するべきなのはこれです。
1BP → 1役割
1つのブループリントには、1つの役割だけを持たせる。
そして、その役割を一言で説明できるようにする。
分け方に迷ったら、「誰に頼むか」で考える。
親クラスにまとめるときは、「共通の責任」を見る。
コンポーネントにするか迷ったら、「なくても成立するか」を見る。
この基準があるだけで、ブループリントはかなり壊れにくくなります。
完璧な設計を最初から目指す必要はありません。
大事なのは、崩れたときに戻れることです。
ブループリントが複雑になってきたら、まずはこう聞いてみてください。
このブループリント、何の役割だっけ?
そこに戻れるだけで、UE5の開発はかなり進めやすくなるはずです。
動画でも解説しています
この記事の内容は、YouTube動画でも解説しています。
ブループリントの分け方や、BP_BaseCharacter、BP_Player、BP_Perception の関係は、文章だけだと少しイメージしづらい部分もあります。
動画ではスライドを使って、
- なぜブループリントは壊れるのか
- 1BP → 1役割で考える理由
- 親クラスと子クラスの分け方
- コンポーネントに切り出す判断基準
- 単一責任の原則をUE5でどう使うか
を順番に解説しています。
文章で整理したあとに動画を見ると、ブループリントをどう分ければいいかがより掴みやすくなると思います。
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